送電と受電について

送電と受電について

初めに

本記事では、送受電において重要な概念である、安定度、電力円線図、ノーズカーブについて、以下の簡易的なモデルで考察することを目的とする。

送電モデル設定

送電した電力は、需要家側に受電される。これについて以下の簡易的なモデルで考える。ただし、送電線におけるインピーダンスは、抵抗はインダクタンスに比べて無視できるものとする。

(十分に送電線が長い場合は、静電容量の影響や波長の影響も考慮しなければならなくなる)

これは、2018年度の電験2種の電力・管理の第3問と同様のモデルである。

 

 

この場合、送電する有効電力は一定であるが、リアクトルによって、遅れ無効電力が消費される。

以下、単位法で考える。電圧に対するキルヒホッフの法則より示すことが出来る。

これを遅れの場合と進みの場合とで、図示すると以下のようになる。

(1)遅れの場合

これは、一般的な負荷(モーターなどのリアクトル負荷)の場合のベクトル図である。

(2)進みの場合

進みの場合、つまり、軽負荷の場合だと、リアクトル負荷よりも、送電線の静電容量が優位になる。

この場合は、自己励磁現象と同様に、受電端電圧の方が、送電端電圧よりも高くなってしまうという、交流送電独特の現象が存在する。これにより、定格電圧以上の電圧が負荷にかかり、負荷が損傷してしまうといった事故が起こる可能性がある。

複素電力と安定度について

次に、送電電力と受電電力について考察する。

以下、遅れ力率が一般的なのでその場合について考察する。

電力は直流回路の場合は、電圧と電流の積であるが、交流回路の場合は、力率も考慮する必要性がある。(余談だが、直流送電は、力率という概念がないので、後に言う安定度やフェランチ効果といった、デメリットが無い。)

上図は、受電端電圧を基準とした場合の電流について考察している。上図より、電流は、

と表すことが出来る。これの複素共役をとると、

となる。これに、受電端電圧をかけると、以下のようになる。

これを受電端電力と定義する。同様に、送電端電力は以下のようになる。

受電端電力の式に、

を変形して、電流の式に書き換えて代入すると以下のようになる。(複素共役に注意する)

一方で、送電端電力は以下のようになる。

この2式から、送電端有効電力と受電端有効電力は等しくなるということが分かる。

この有効電力の事を、定態安定度といい、δのサイン関数になる。

δは相差角というのだが、これが90度よりも大きくなると脱調という現象が生じて送電困難になる。なので、技術者の見せ所として、如何にδを90度よりも下に保ち、かつ送電電力を上げるかということが挙げられる。

式から分かるように、電圧を上げる、若しくは、直列コンデンサなどで、送電インダクタンスを低下させることが有効とされる。

この図は2019年の電力管理第3問の図である。このように、サインカーブを取ることが知られている。

電力円線図

ここで、話を受電端電力と送電端電力の話に戻そう。

という式を用いてδを消去すると以下のようになる。

送電端円

受電端円

 

これは、有効電力を横軸、無効電力を縦軸とすると円を描くことから電力円線図と呼ばれている。これにより、送電可能有効電力の最大値や生じる無効電力の大きさ等を求めることが出来る。

ノーズカーブ

最後に、ノーズカーブについて解説する。送電端電圧と送電端無効電力を一定とした場合、

について、で解いた場合、有効電力と送電端電圧の関係は以下のような鼻のようなカーブになることが知られている。これをノーズカーブという。

電験2種、平成29年電力問7から引用

上図C点の状態において、送電電力が上昇した場合、送電電圧が上昇してしまう。これにより、さらに送電電力が上昇してしまう。これにより正のフィードバックが働き、臨界点Bに至って不安定となる。

 

一方で、A点の場合、送電電圧が上昇した場合、送電電力が低下してしまう。ゆえに、負のフィードバックにより、送電電圧が低下するように働く為、平衡点Aで安定する。

ゆえに、送電においては、A点のような位置に来るように計算して送電電力と系統電圧を調整する必要性がある。

まとめ

電力円線図、ノーズカーブ、安定度の概念は難しいが、それらは、複素電力の公式と送電線モデルから導出されるということを覚えておこう!!

以下参考にしたサイトや書籍を示す。

参考文献

 

 

 

 



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