ベクトル図とプログラム

ベクトル図とプログラム

はじめに

ベクトル図は電気工学の分野では、電圧や電流を求めるための計算で使用される。というのも、電圧や電流は、その大きさだけでなく、位相の差といった情報も含んでいるからである。なので、2つの情報を扱うために、複素数やベクトルの演算を多用する。今回は、ベクトルをPythonを用いて表示して、電力系統をベクトル表示することを試みる。また、負荷が進み力率の場合に生じる可能性があるフェランチ効果についても考察する。

ベクトルの複素数表示

このような、無限大母線における電圧降下について考察する。ただし、以下計算の単純化のため単位法とする。

キルヒホッフの法則から、送電端電圧と受電端電圧の関係は複素数を用いると以下のようになる。

これをベクトル図としてプログラミングすることができるかを考察する。

プログラム

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math
# 5×5サイズのFigureを作成してAxesを追加
fig = plt.figure(figsize = (5, 5))
ax = fig.add_subplot(111)

# 格子点を表示
ax.grid()

# 軸ラベルの設定
ax.set_xlabel("実軸", fontsize = 16)
ax.set_ylabel("虚軸", fontsize = 16)

# 軸範囲の設定
ax.set_xlim(0,3)
ax.set_ylim(-3,3)

# x軸とy軸
ax.axhline(0, color = "gray")
ax.axvline(0, color = "gray")

# ベクトルを表示
# quiver(始点x,始点y,成分x,成分y)
I=1.0
#力率角
theta = math.radians(30)
#複素電流
I_bar=I*(np.cos(theta)-1j*np.sin(theta))
#受電端電圧
V_r=1.0
#送電線の抵抗値
r=1
#送電線のインダクタンス
x=1

#送電端電圧
V_s=V_r+ (r+1j*x)*I_bar


#電流ベクトル
ax.quiver(0, 0, I_bar.real, I_bar.imag, color = "red",
          angles = 'xy', scale_units = 'xy', scale = 1)

#受電電圧(位相の基準)


#受電電圧(位相の基準)
ax.quiver(0, 0, V_r.real, V_r.imag, color = "black",
          angles = 'xy', scale_units = 'xy', scale = 1)




#抵抗にかかる電圧

ax.quiver(V_r, 0, (r*I_bar).real, (r*I_bar).imag, color = "blue",
          angles = 'xy', scale_units = 'xy', scale = 1)



#インダクタンスにかかる電圧

ax.quiver((V_r+r*I_bar).real, (V_r+r*I_bar).imag, (1j*x*I_bar).real, (1j*x*I_bar).imag, color = "yellow",
          angles = 'xy', scale_units = 'xy', scale = 1)



#送電端電圧ベクトル
ax.quiver(0,0, V_s.real, V_s.imag, color = "pink",
          angles = 'xy', scale_units = 'xy', scale = 1)


plt.show()

遅れ負荷のとき

このプログラムを実行すると以下のような画像が出る。

ただし、V_r,V_s,RI,jXI,Iを黒、ピンク、青、黄、赤ベクトルとする。

このように、遅れ負荷の場合は、受電端電圧の方が送電端電圧よりも低いという普通の結果がでる。次に、軽負荷のとき、つまり送電線の静電容量の影響が大きくなったときつまり電流が進みベクトルになったときのことを考察する。

進み負荷のとき

先程のプログラムの力率角を30度から-60度にした場合の出力結果を以下に示す。

このように、受電端電圧が送電端電圧よりも大きくなるフェランチ効果が発生する。この場合、電圧上昇により負荷にダメージーが生じる可能性があるので対策が必要である。

まとめ

今回は、ベクトル描写プログラムとしてPythonを用いた場合について考察してみた。ベクトル図は複素数と共に電気工学では多用される概念ではあるが、プログラムと合わせて考察されている記事は少ない気がした。これは、電気工学や周辺の分野が地味にデジタル化から遅れているからだと考えられる。なので、今後もこのようなプログラミングと電気の知識を掛け算したような記事を執筆していきたい。

参考文献

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