
はじめに
同期機は誘導機よりも高価であるが、トルクが強く滑りが生じにくいといった点から電気時計や発電設備などに使用される。また、誘導機とは異なり力率を制御できるといった特徴はあるが一般的に回転数を滑りによって制御することはできない。ところで、力率を制御するためには回転子に流れる励磁電流を制御する必要性があるが励磁電流を変化させるとそれに伴い電機子電流も変化する。この特性をV字曲線(V字特性)と呼ぶのだが、今回は、電動機の場合についてを数式を用いて導出することを試みる。今回の記事は、大学課程 電気機器(1)を参考とした。
ベクトル図
まず、同期電動機の場合の等価回路を示す。
ゆえに、キルヒホッフの電圧則によるベクトル図は以下のようになる。ただし、都合によりVをE,E0をEG二対応しかつ単位法を採用した。
式の導出
ベクトル図に対して余弦定理を用いると以下のような式を得ることができる。
この式に対して、
である同期安定性の式を用いてδを消去すると以下の様になる。
プログラム
位相角を消去しない場合
位相角を消去しない場合は、式が後者と比較して単純になる。
そのプログラムを以下に示す。
import matplotlib.pyplot as plt import math import numpy as np import japanize_matplotlib #P=(E_0*E/X)*np.sin(delta) #E_dot_t = E_0+jXI #余弦定理より, #(XI)**2=E_0**2+E**2-2*E_0*E*np.cos(delta) P=1.0 X=1.0 k=1.0 E=2.0 I_f= np.linspace(0,4,100) #起電力は励磁電流に比例するから、 E_0 = k*I_f #同期安定性の式(Pの式)より、 delta = np.arcsin(X*P/(E*E_0)) #余弦定理より I=(1/X)*(E_0**2+E**2-2*E_0*E*np.cos(delta))**0.5 plt.title('同期電動機のV字曲線') # x 軸のラベルを設定する。 plt.xlabel("励磁電流") # y 軸のラベルを設定する。 plt.ylabel("電機子電流") plt.plot(I_f,I) plt.show()
このプログラムによって出力されるグラフを以下に示す。
位相角を消去する場合
位相角を消去した場合のプログラムを以下に示す。
import matplotlib.pyplot as plt import math import numpy as np import japanize_matplotlib #P=(E_0*E/X)*np.sin(delta) #E_dot_t = E_0+jXI #余弦定理より, #(XI)**2=E_0**2+E**2-2*E_0*E*np.cos(delta) P=1.0 X=1.0 k=1.0 E=2.0 I_f= np.linspace(0,4,100) E_0 = k*I_f #主な変更点 I=(1/X)*(E_0**2+E**2-2*E_0*E*(1-(X*P/(E*E_0))**2)**0.5)**0.5 plt.title('同期電動機のV字曲線') # x 軸のラベルを設定する。 plt.xlabel("励磁電流") # y 軸のラベルを設定する。 plt.ylabel("電機子電流") plt.plot(I_f,I) plt.show()
まとめ
今回は、同期電動機のベクトル図と同期安定性の式から位相角を消去もしくは用いる事によって励磁電流と電機子電流の関係、V字曲線を解析的に示すことができることが分かった。ただし、V字曲線を人力で計算した場合計算量が多くなるので、計算機を使用した。電験では、プログラム計算機の使用は禁止されているが、興味のある方はぜひとも導出やプログラムなども勉強して欲しい限りである。
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