
交流での送電電線路において安定した電圧を提供するため、変電所内に調相設備を設けています。
本項では、調相設備の種類と役割について取り上げましょう。
交流の送電線路では、需要側の負荷に変動によって無効電力が増減します。
下の図は有効電力と無効電力、皮相電力の関係をベクトルで表したものです。
図のθは負荷にかかる電圧と電流の位相差を差しており、有効電力/皮相電力(cosθ)を力率といいます。
供給電圧に対して負荷が大きい場合は図の左側のように力率は遅れ、負荷が小さい時は右図のように力率が進むことになるのです。
遅れ力率は電圧降下を、進み力率は電圧上昇を生じさせてしまいます。
このような遅れ、進み力率のもととなるθを小さくして力率を1に近づけると、力率は改善されます。
それを行う装置が調相設備で、主な種類は以下のものです。
- 同期調相機
- 電力用コンデンサ
- 分路リアクトル・直列リアクトル
- 静止型無効電力補償装置(Static Var Compensator:SVC)
まず、同期調相機について説明します。
励磁電流を加減することで遅れ、進み電流を流して遅れ無効電力と進み無効電力の両方を調整できる調相設備です。連続的に調整が可能ですが、メンテナンスが大変なのであまり使用されていません。
次に電力用コンデンサについて説明します。
電力用コンデンサは、電線路に電圧降下が起きた時に遅れ力率を改善し、無効電力の軽減や電圧降下を抑える装置です。この調相設備を設置するときは、直列リアクトルも必要になります。
3つ目は、分路リアクトル・直列リアクトルです。
分路リアクトルと直列リアクトルは、電力用コンデンサと逆の働きをします。電線路の負荷が軽減し電圧上昇が起きた時に、進み力率を改善し電圧上昇を抑える働きをする装置です。
外見は変圧器によく似ています。
4つ目は、静止型無効電力補償装置(Static Var Compensator:SVC)です。
この装置は電力用コンデンサと分路リアクトルを組み合わせて、半導体素子を用いて制御性を高めた最新型のものです。つまり、遅れ、進み力率両方に対応できる装置です。
さらに細分化すると、サイリスタ制御リアクトル方式、サイリスタ開閉コンデンサ方式、自励式インバータ方式の3つがあります。
調相設備は、変電設備の中でも重要な設備の一つです。原理や種類や役割をしっかり覚えておくようにしましょう。
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