送電におけるコンデンサとコイルのまとめ

送電におけるコンデンサとコイルのまとめ

この記事では、電力用コンデンサ、分路リアクトル、直列コンデンサ、直列リアクトル、限流リアクトル,消弧リアクトル,補償リアクトルの役割について解説する。これらは、紛らわしい概念なので、しっかりと役割を理解して覚えよう。

電力用コンデンサ

電力用コンデンサの役割は単純で、モーターなどのリアクトル負荷により重負荷になった場合、系統の力率が悪化して受電電圧の低下、送電電力の低下、安定度の悪化といった悪影響が発生してしまうので、それを防止するために、回路に並列にコンデンサを接続する。こうすることで、力率を改善することが出来る。一般的に、力率を1にするのは難しいので、この操作によって0.95以上の値にする。

電力用コンデンサの概略

電力のベクトル表示(電力用コンデンサによる力率改善)

分路リアクトル

お盆休みといった休業期間の際は、回転機などの負荷が減少することで、送電線の静電容量が優位になる。これにより、受電端電圧が送電端電圧よりも大きくなるという摩訶不思議な現象が発生する。これは、フェランチ効果とよばれており、過電圧により系統に接続されていた機器が破損するといった問題が生じることがある。

このような問題を改善するために考案されたのが、分路リアクトルである。分路リアクトルは、系統に並列に接続することによって、稼働させる。

分路リアクトルの概略

電力ベクトル図(分路リアクトルによる力率改善)

直列コンデンサ

一般的に、送電線の抵抗はインダクタンスに比べて無視できるくらいに小さいので、送電可能電力は、以下の様に表されて、これを安定度という。

この式を見て分かるようにインダクタンスであるXを低下させられれば、送電可能電力を大きくすることが出来る。ゆえに、系統に直列接続することによって、インダクタンスを減少させることが出来る。

ただし、デメリットとして、リアクトル負荷との共振によるタービン発電機の軸ねじれ現象、変圧器の鉄心が共振することによる雑音といったものや、コンデンサの残留磁化による自己励磁現象による系統電圧の上昇が挙げられる。

 

直列コンデンサの概略

直列リアクトル

最後に、電力用コンデンサに直列に接続する直列リアクトルについて述べる。

半導体装置の高精度化により、電力系統にもパワエレ機器が参入しつつある。一般的にそれらはPWMなどの方形波を使用した制御方法になる。方形波は、フーリエ変換すると、第3高調波や第5高調波といった高調波を含むので、電磁気的なノイズになりうる。

そこで、もし、系統に対して並列に電力用コンデンサが接続されていた場合はどうなるだろうか??

周波数が高くなると、コンデンサに電流が流れやすくなり、エネルギーが集中する。ゆえに、コンデンサが焼損するという現象が発生しやすくなる。そこで、それを防ぐために、あえて、インダクタンスを直列に接続させることにより、電力用コンデンサに侵入する高調波成分を緩和させるといった役割を持つ。

 

 

電力用コンデンサに直列接続される直列リアクトル

限流リアクトル

短絡電流を抑制するために系統に直列にリアクトルを設置する。当然だが、短絡電流だけでなく、定常時の電流も低下するので、送電電力の低下や安定度の悪化といったデメリットがある。

消弧リアクトル

 

一般的に、地絡電流が流れる場合、対地電圧は変化しにくいという利点がある反面、電磁気的なノイズが発生してしまうというデメリットがある。なので、落雷時において電磁気的なノイズを減少させるには、非接地方式といった方法が望ましいと考えられるが、それでも、静電容量による充電電流による電磁気的なノイズは発生してしまう。そこで、あえて、消弧リアクトルと呼ばれるリアクトルで接地させることにより、地絡時の等価回路のインピーダンスを無限大にしてしまおうというものが消弧リアクトル接地と呼ばれるものである。これは、並列共振のインピーダンス無限大の現象を上手く用いている。これにより地絡時に生じる地絡電流を極小にできるので、周辺機器のノイズ対策に役立つ。

 

補償リアクトル

消弧リアクトルの場合は、架空送電線において使用されているのだが、補償リアクトルの場合は、静電容量が巨大になる地中送電線の接地方式として利用される。目的は、巨大な静電容量による充電容量の低減という役割があり、抵抗と補償リアクトルを並列に接続する。

あくまで充電電流の低減が目的であり、地絡電流を0にすることが目的ではないということが、消弧リアクトルの役割である。

まとめ

コンデンサやコイルは、交流の場合は、摩訶不思議な現象を発生させる要因になりうる。なので、それらを考慮しない方法としては、直流送電が挙げられるが、半導体制御による複雑な変電が必要であるというデメリットが存在する。確かに、再生可能エネルギーの普及により直流送電はヨーロッパなどで盛んであるが、未だ送電と言えば交流送電を指すことが多い。なので、これらの設備は現在だからこそ重宝されると言っていいであろう。

参考文献

進相コンデンサ回路に直列リアクトルを設置する目的



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