
はじめに
電験三種理論で、円形導体の磁界分布を推定するという問題があった。この問題を厳密に解く場合だとビオザバールの法則を使うのだが、受験生はおそらく感覚的に解いたものと思われる。具体的には、円形導体に近いほど磁場が強くなりちょうど真ん中では最大になるだろうという感覚である。本記事では、円形導体の磁界分布についてビオザバールの法則を用いて教科書に載っている方法で簡易的に導出したとその結果が正しいかどうかPythonを用いて図示することを試みる。
円形導体の磁界分布の導出
ビオザバールの法則を用いて簡単に導出する。細かい導出過程や記号などは以下の記事を参考にして欲しい。
まず、微小導線によって生じる地点x上の磁場は以下のように表すことができる。
電流と磁場は直交するので今回のθはπ/2である。また、
と表せることに注意する。
(rは導体の半径として、Rは微小導体から地点xまでの距離でΦは地点xから微小導体を見たときの角度とした。)
微小導体を円環部に対して積分すると以下のようになる。
まずこれは、xの関数である。また、x成分以外の磁場は、対称性より打ち消し合って0となる。
この式を用いてx方向の磁界分布を解析する。
Pythonによるプログラム
以下のようなプログラムを作る。
import matplotlib.pyplot as plt import math import numpy as np import japanize_matplotlib #定数設定 r=1.0 I=10 #変数設定 x = np.linspace(-10,10,100) R=(r**2+x**2)**0.5 sin_phi= r/R plt.title("円形導体の磁界分布") plt.xlabel("x軸[m]") plt.ylabel("磁界[A/m]") H=(I/(4*math.pi*r**2))*sin_phi*(2*math.pi*r) plt.plot(x,H) plt.show()
これを実行した場合、以下のような画像ができる。
この図からわかる通り、磁界は右ねじの法則に沿った一定方向で通りかつ中心部で最大値をとる。
もちろん、対称性からもこのようなグラフになるということは想像できるだろう。
まとめ
円形導体にビオザバールの法則を適用して磁場の分布を求める問題は大学教養課程レベルでは頻出とされるが、実際にはどのような分布になるのかはあまり言及されていないと思われる。本記事では、対称性によって解くことができる電験3種理論の問題を取り上げた。そしてその問題を厳密に解くことによって、分布を調べた。
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