はじめに
単相交流回路の負荷の消費電力を測定する場合は、直流回路とは異なり電圧・電流を測定するだけでは不十分であり、力率も考慮しなくてはならない。その方法として、三つの電圧計や三つの電流計を使用して力率を考慮に入れる三電圧計法・三電流法という測定手法がある。今回はどうしてこのような測定方法により消費電力が計算できるかという原理について余弦定理を用いて解説しようと思う。
余弦定理とは
三平方の定理は有名である。直角を挟む二辺の長さが分かれば、残りの一辺の長さが分かるというものである。しかし、三平方の定理では、当然のことだが直角三角形の場合でしか利用することができない。そこで、一般角θの場合どのようになるのかというのを考えたのが余弦定理であり、以下のような式で表すことが出来る。
これを、cos θについて解くと以下のようになる。
今回はこの式を使用する。
三電圧計法とは
導入
抵抗値が既存の抵抗と3つの電圧計を用いて電力を計測する方法である。以下のように回路を形成した場合、負荷が消費する電力は以下のようにあらわすことができる。
証明
まず、各パラメーターのベクトル図は以下の様になる。
ここで、三角形に対して余弦定理を適用すると以下の様になる。
ゆえに、
これを電力の式に代入することによって、
を得ることができる。
三電流計法とは
導入
抵抗値が既存の抵抗と3つの電流計を用いて電力を計測する方法である。以下のように回路を形成した場合、負荷が消費する電力は以下のようにあらわすことができる。
証明
まず、各パラメーターのベクトル図は以下の様になる。
ここで、三電圧計法と同様に余弦定理を用いると以下の様になる。
ゆえに、
これを電力の式に代入することによって、
を得ることができる。
まとめ
単相交流回路の負荷の消費電力を求める場合には、力率も考慮する必要がある。なので、三つの測定パラメーターのベクトルを用いて推定する方法を今回は紹介した。また、そのようなベクトル三角形の角度を扱う場合に役に立つのが余弦定理である。
この証明方法はあまり紹介されていないようであるが、計算量が少なくて済むので、是非とも身に付けよう。
参考(ごり押しによる解析)
ベクトル図を書いて余弦定理が恐らく一番簡単な証明方法ではあるが、負荷側のインピーダンスをr+jxとみなすことにより代数的に解析することができる。
上図のような回路設定で解析してみる。
まず、
である。ここで、
であることを利用すると、天下り的であるが以下の事が分かる。
この様に、あらかじめ答えが分かっていればごり押しでも解ける。また、この問題は計算量としても電験やエネ管の問題に出てきてもおかしくないので計算できるように計算力を磨いておこう。
参考文献

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