
水力発電所を構成する設備の中で、水力を電力に変換する設備の一つは水車です。
本項では水車の種類と特徴について取り上げます。
発電用の水車には、大きく分けて衝動水車と反動水車があります。
それぞれの水車の構造と特徴について説明しましょう。
衝動水車は、流水をノズルから噴出させ、その衝動でランナに当てて水車を回転させる構造の水車です。
発電用水車ではペルトン水車があります。
ノズルから流水をジェット水流にして噴出させ、ランナのバケットに当てて回転させる構造で、ノズルからのジェット水流を調節するニードル弁がついています。
出力が急変した時にもデフレクタによってジェット水流の方向を変えてランナを回転させないようにする安全対策がされています。
落差が高く流量が少ないところの使用に向いており、水流の調整ができるので効率の低下が低いというのが、この水車の特徴です。
◎衝動水車であるペルトン水車は、「高落差」・「少水量」と覚えましょう!
反動水車は、ランナ内を通過する流水でランナを回転させ水車を回す構造の水車です。
フランシス水車、プロペラ水車、カプラン水車、斜流水車、デリア水車が反動水車に分類されます。
フランシス水車は、流水がランナの横から流入し、それによってランナが回転し、水は軸方向へと流出していく仕組みです。
ランナに流入する水を調整するために羽のような構造のガイドベーンがついています。(ベーンとはプロペラなどについている羽根のことです)
低落差から高落差まで幅広く使えて、負荷変動による効率低下が少ないのが特徴です。
プロペラ水車はランナにプロペラ型のランナベーンがついている水車で、カプラン水車はこのランナベーンが可動式になっている水車です。
低落差に向いている水車で、カプラン水車は負荷変動に対応できるため効率低下が少ないのが特徴です。
斜流水車とデリア水車はフランシス水車とプロペラ水車を組み合わせた構造になっている水車です。
デリア水車は、ランナベーンが可動式になっています。
プロペラ水車よりも適用できる落差が大きく、フランシス水車よりも負荷変動による効率低下が小さいので高効率な運転が可能なのが特徴です。
反動水車では、ランナの出口から急激に水が流れ、減圧することによって水中に気泡が発生する「キャビテーション」という現象が起きる可能性があります。
この現象は、騒音や振動、効率の低下の原因となり、ランナの浸食も生じさせる危険があるので、下記のような対策が必要です。
- 吸出管を高くしない
- 比速度をあまり大きくしない
- 過負荷運転や部分負荷運転を避ける
- キャビテーションの発生しやすい場所に耐キャビテーション材料を使用する
発電所に設置する水車を選定する際に、各水車の特徴とともにそれぞれの水車の比速度も重要になります。
比速度とは、実物の水車を相似形で縮小して作った模型水車に対して、1mの落差で1kWの出力が生じる1分間の回転速度のことです。
比速度は以下の式で求められます。
○の1/2乗や○の5/4乗は計算しづらいですし、取っ掛かりにくいと思います。 例えば、2の1/2乗は、√2で2の平方根となり、2の5/4乗は√√2の5乗のとなるので、ぜひ覚えておいてください。
水力発電の出力を決定するのは水車が最も重要です。
設置場所に適した水車を選定するためにも、本項で取り上げた内容は基礎になるのでしっかり覚えておきましょう。
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